三泊四日、民主化デモ真っ只中の香港・マカオへの旅。ネオン輝く繁華街や金色の水上レストランなどギラギラした部分だけでなく、今にも崩れそうな雑居ビルに侵入するなど、煌びやかな香港のもう一つの顔にも迫ります。マカオでは沢木耕太郎の「深夜特急」にも描かれた場所を訪問。今回は同行者ありの旅。【旅行時期:9月末】
アジアよりもヨーロッパや中近東を訪れることが多かった私だが、沢木耕太郎の「深夜特急」を読んで以来、香港には少なからず興味を持っていた。
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煌びやかな摩天楼とその裏に黒々と聳える雑居ビル、洗練された100万ドルの夜景と、おもちゃ箱をひっくり返したような雑多な繁華街。
今回は同行者の希望で香港を選ぶこととなったが、光と闇が共存する香港の混沌を、ふと感じてみたい気になった。
英国の格付け会社スカイトラックスから5星を獲得した羽田空港国際線ターミナル。
羽田から香港国際空港までは4時間超、時差1時間と、韓国中国台湾に継いで手軽な海外旅行先として納得できる。
エメラルドグリーンの海上には貨物船がゆっくりと行き来する。海岸沿いに林立する高層ビルを眼下に見れば、じきにランディングだ。
ピークシーズンは過ぎているものの、まだまだ空港は旅行者たちでごったがえしていた。
空港から市内中心部まではいくつかアクセス方法があるが、ホテルまで直接送り届けてもらえるところがポイントでリムジンバスを利用することにした。
日本から予約可能である。
【香港空港送迎】エアポートシャトルバス予約 ★台風シグナル8でも運行します★ | 香港ナビ
バス内は綺麗で快適。
ただし、バスの難点は渋滞にはまると異常に時間がかかるということ。
今回の場合は香港島側に渡ってからがひどい渋滞で1時間超かかった。
乗換を厭わなければエアポートエクスプレスの列車をおススメする。この場合、香港駅または九龍駅までわずか20分超である。駅からは各ホテルまで無料シャトルバスが出ている。
一人旅では低価格で収めたいということと、現地の人とやりとりをするプロセスが好きでアパートを借りるのだが、今回は同行者がいるため無難にホテルをとっていた。
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金鐘(アドミラリティ)駅からパシフィックプレイス内を通って直結しているため便利。
香港島の中心部ではあるが坂を登った所にあり静かだ。
シーズンによるのかもしれないが、欧米人が多く落ち着いた雰囲気のホテルだった。
スタッフは非常に丁寧で感じが良く、サービスについても行き届いていたように思う。
久しぶりにホテルの部屋に泊まるが、やはりアパートに比べて楽であることは間違いない。
さて、一息ついたらまずは香港一の繁華街、尖沙咀(チムサーチョイ)へと向かう。
地下鉄から一歩出ると、そこは夥しい人が行き交う世界有数の繁華街。
目当ては彌敦道(ネイザンロード)から少し入ったところにある、北京ダックの名店「鹿鳴春」。
人気店のため予約がベター。しかしHPが無いので電話予約となる。片言の英語を喋るスタッフがいる。
店はなんともいえない雑居ビルの一角にある。
日本では皮のみを食べる北京ダックだが、本当は肉も食べるのがスタンダード。
ここではパリッとした皮にジューシーな肉がついて運ばれてくる。
しかし、いかんせん量が多い。一羽単位で頼まなければいけないので、2人で食べる場合はもう必死である。
他のメニューに割いている胃のスペースなど無い。
食後は彌敦道をヴィクトリアハーバーに向かって歩くことにした。
尖沙咀。多国籍の人種が行き来し、ネオンと人に溢れ返る。
猥雑という言葉がよく似合う、安宿や両替商、雑多な店の入った雑居ビル重慶マンション。
かと思えば、彌敦道の入口には最高級ホテルであるペニンシュラ香港が堂々たる姿で鎮座している。
そのままヴィクトリアハーバーまで突き進むと、すでにプロムナードには人だかりができていた。
人を掻き分けて海沿いに出ると、目の前に眩いばかりの夜景が広がった。
いずれ本土に吸収される香港の街。
ゆっくりと、しかし着実に本土化の波は押し寄せている。
自由を謳歌するかのように煌めくこの夜景も、そのうちくすんでしまうのだろうか。
色とりどりに変化するビルの光を見つめているうちに、なんだか切ない気持ちになった。
海沿いのアベニューオブスターズには香港映画スターたちの手形があり、それらを辿って東へと歩いていく。
そして、DFSギャレリア前から予約していたオープントップバスに乗り、香港名物ナイトドライブの始まりだ。
まずは海沿いを彌敦道まで戻り、そこから旺角方面へとひた走る。
いよいよジャッキーチェンの映画の世界へ。
頭上ギリギリに迫る極彩色のネオンの渦。
降り立った女人街は、安価な土産物と観光客に溢れ返っていた。
思うに、尖沙咀は今や観光客のための尖沙咀と化した。
とりわけ、近年急激に増加の一途を辿る中国本土からの客人の夥しい数に、もはや崩落寸前である。
かつては高級ブランドを棚買いしていた本土客も、近年様子が変わってきたという。
彼らが今香港へ来て最も購入するものは、紙おむつやベビーグッズ、化粧品など。もしくは宝石などの宝飾品。
尖沙咀には彼らを目当てにしたドラッグストア、化粧品店、宝石店の占める割合が高くなり、アジアの雑踏に迷い込んだ時に感じる、突き動かされるような得体の知れない熱気や地元ならではの独特の匂いというものを正直あまり感じない。
だがしかし、それはそれで尖沙咀という変わりゆく繁華街のひとつの姿なのだろう。
極彩色に光るネオンの残像を瞼の奥に感じながら、深夜近くになってホテルへ戻った。