元添乗員の国外逃亡旅行記

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神々の棲家、ヒマラヤの懐で過ごす数日間 ~ネパール ジョムソン~

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夢枕獏神々の山嶺」を読んでから、ずっと憧れを抱いていたネパールヒマラヤの山々。もう数年前のことになるが、仕事でヒマラヤトレッキングの添乗にアサインされた時は素直に嬉しかったことを覚えている。

 

 世界の8000メートル峰の全てが集まるヒマラヤ山系。富士山の約2.5倍の高さである。地球上でここより高い場所は無い。その上にあるのはひたすら続く宇宙だけだ。

 

神々が棲むといわれる山嶺が美しく連なり、神々しくコーティングされた白銀の頂には想像を絶する苛酷な環境が存在するという。

 

1800年代から世界中のクライマー達を魅了し登頂に駆り立て、そしてそれを拒み続けてきた山々。雄大にして麗美なヒマラヤの懐に抱かれて日常の喧騒を忘れる、それが旅の目的であった。

 

 ネパールの首都カトマンズや古き良き田舎町ポカラ、美の都パタンなどの街を歩き人々の生活を垣間見ることはもちろん、旅のメインはやはりヒマラヤの麓町ジョムソンでの連泊トレッキングだ。朝の澄み切った空気の中、ヒマラヤリゾートのホテルを出れば峰々を縫って吹き込む冷たい風が身体と心を引き締める。

 

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ジョムソンのトレッキングでは、その昔チベットとインドを結ぶ交易路であったジョムソン街道を辿り、少し離れた村や寺院を訪ねる。荒涼とした大自然の中、足の裏にヒマラヤの地を踏み締めながら歩けば不思議とパワーが漲ってくる。途中、村から村へ食料を運ぶロバの隊商に出遭った。

 

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「カラン、カラン」とロバの首につけた鐘の音が鳴る他は、ところどころ流れる小川の流れと風の音だけ。驚くばかりに雄大なヒマラヤの自然を独り占めできる贅沢。

 

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 山肌に沿って少し登り、ふと顔を上げるとニルギリの白峰が太陽光を反射して銀色に輝いていた。その非現実的な美しさに思わず溜息が出る。エメラルドクリーンの水をたたえたドゥンバ湖からのビューポイントでは、世界に名立たる8000メートル峰ダウラギリのピークが見える。

 

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ジョムソン近郊にはいくつか村があり、各村にはチベット仏教の寺院(ゴンパ)がある。ひんやりとして仄暗いゴンパの内部には、松脂で炊いたお香の匂いが漂っている。静寂の中で幽かに聞こえるお経。ヒマラヤの厳しくも優しい自然と一体化し、神々と共に棲む人々の息遣いが感じられた。

 

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 実際に8000メートル峰に登るわけではないが、神々の棲むと云われる山々の懐で過ごす数日間は一生忘れられないものとなる。大自然の壮大さ、厳しさ、優しさ、全て含めて自らの身体で感じとってみれば、人間の力を超えた不思議な神々の存在を信じずにはいられなくなるだろう。