元添乗員の国外逃亡旅行記

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ファッションで巡るギリシャ 色彩溢れる海の風景を訪ねて ➁前編 ~ケファロニア島 ドロガラティ洞窟、メリッサニ洞窟~

クロアチアスロベニアを経てギリシャのメテオラ、アテネを巡った一人旅も、日本から来た母と妹を加えて賑やかな3人旅に。スタイルアドバイザーとしてIGや雑誌、ウェブコンテンツを中心に独自のコーデ術を発信する妹(IGID:miho0319kawahito)による旅に合うファッションコーデと、私の旅プロデュースとの姉妹コラボも今回のテーマの一つ。そしてこれからは、毎回旅気分が盛り上がるキャッチ―な曲も同時にご紹介。夢のように美しいギリシャの絶景と共に、ぜひぜひお楽しみ下さい!【旅行時期:3月末~4月上旬】※iphoneの方は記事を読みながら同時にyoutubeを開けないですが、好きなタイミングで聴いてみてください。

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2日目はあまりに見所が多いため、2回に分けて書きます。
 
 
早朝3:30。ホテルをチェックアウトすると、目の前の空港ターミナルへと向かった。
 
今日からはいよいよ本土を離れて島への旅が始まる。
 
アテネからケファロニア島への便は、この時期早朝の一本しかない。その代り6時過ぎには島に着くので現地で休むことができる。
 
早朝の空港は、早くもちらほら乗客の姿があった。

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ところが、何らかの手違いでチェックインができない。Eチケットはあるのだが、仲介会社の手違いらしく空港スタッフは何もしてくれない。
 
早朝のため仲介会社にも連絡が繋がらず、チケットオフィスで調べてもらうと料金はリファンドされているとのことなので、仕方なく新しいチケットをその場で購入し直し。
 
とにもかくにも、なんとか予定通り5:15発オリンピック航空の便に乗ったのだった。

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1時間程度の飛行時間、真っ暗な中着いたケファロニア島は、島全体がまだ眠っているようだ。

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未明の風はまだ冷たく、少々肌寒い。
 
予約しておいたタクシーに乗り込むと街灯もなく闇に包まれた山がちの島を、アルゴストリの街に向かって走る。
 
島で最も大きな街、アルゴストリの中心広場に面した好立地のホテルイオニアンプラザ。
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島には五つ星高級ホテルなどは無いが、車しか足がないケファロニアでは、レンタカーを借りでもしない限り、ホテルはアルゴストリの街、しかも街の中心広場付近にとるべきである。
 
ホテルから出ると目の前の広場にはカフェやレストランが軒を連ねていて車を使う必要が無いからだ。

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島では一番大きなホテルというが、それでもこじんまりしたフロントにはおじさんが一人だけでスタンバイしていた。

 

チェックインを早くさせてもらったが、まだ7時前だ。

 
ロビー横のダイニングからは焼き立てのパンやハムの焼ける良い匂いが漂ってくる。
 
そういえば、そろそろ朝食が始まる時間。
 
フロントのおじさんに目配せすると、自由に朝食を食べていいという。
 
私たちはまず朝ご飯を頂くことにした。

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決して大きなダイニングではないが、各種果物のフレッシュなジュースやギリシャヨーグルト、焼き立てパンや肉類が過不足なく並び、テーブルにはちゃんと生花が活けられている。

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朝食が終わってひと眠りした後10時半頃、いよいよケファロニア島探索に出発だ。
 
ケファロニア島イオニア海最大の島。端から端まで車で最短2時間はかかる。実質、車でなければ一日で回ることは不可能である。
 
 
外に出てみると、先ほどまでは闇に包まれていた広場がすっかり明るくなっていた。
 
シーズン前の今は、ここにはほとんど観光客がいない。広場でお喋りをしていた何台かのタクシーのうち、ふと目が合った赤いタクシーのおじさんにお願いすることにした。
 
彼の名前はスピロス。
 
何気なく選んだタクシーだったが、このスピロスさん、実に素晴らしい人柄の持ち主だったのだ。
 
 
 
広場を発った車は、あっという間に街を出て起伏の激しい島の道をぐんぐん走って行く。
 
出る時には空を覆っていた厚い雲も、盛り上がる旅気分に合わせるようにどんどん遠のき、今や真っ青な空にギリシャ特有の眩しい太陽が燦々と輝いている。
 
島は山がちだが、最高峰でも1600m超。そして背の低い植物や木ばかりで見通しが良い。

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窓から吹き込む心地よい風に髪を靡かせているうちに、車はある開けた空き地に停まった。
 
ここは見なくていいかと思って伝えていなかったのだが、せっかくだからということでスピロスさんが気を利かせて立ち寄ってくれたようだ。
 
ドロガラティ洞窟。鍾乳洞である。
 
ただし、オフシーズンだということを忘れてはならない。
 
入口の土産物屋のおばさんによると、やはり今の時期はクローズだとのこと。しかし、階段を下って洞窟入口までは行けるので、柵越しにならば中が覗けるということだ。
 
観光地化された鍾乳洞というものにそんなに興味はなかったのだが、せっかくだから見てみることにした。
 
狭くて滑りやすい石段を下って行くと、空気はしだいに冷やりとしてくる。
 
両側には苔が青々と群生し、足元には高い湿度により水がしたたり落ちている。

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洞窟入口に辿りつき、中を覗こうとすると暗がりで何かが動く気配がした。
 
みすぼらしい身なりをした白髪の老人だった。
 
たまに来る観光客を目当てにしている物乞いだろう。そう思って少し用心したのだが・・・
 
 
何やら様子がおかしい。
 
老人は何も言わず、ただおもむろに腰に手を回すと、そこにジャラジャラとついていた数種類の鍵のうち、一つの錆びて古びた鍵を手に取った。

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もしや。
 
 老人は、重い鉄柵をギィと開くと、私たちに向かって手招きした。

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なんと、入れてくれるらしい。
 
 中に入ると、そこには想像を超えた神秘の空間が広がっていた。

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約1億5千年前に形成され、途方もない年月をかけて形造られてきた鍾乳洞。1億5千年前といえば、地球史ではジュラ紀。始祖鳥が出現し、恐竜の全盛期へと繋がる時代である。

 

恐竜が生きていた時代を越えて、ヒマラヤ山脈ができ、人類誕生をも見届けてきた太古の鍾乳洞が今目の前にあるとは、もはや歴史のスケールなどという問題ではなく地球の神秘だ。
 
洞窟内は湿度90%。
 
雨がしとしと降るように、複雑に垂れ下がる無数の鍾乳石からは、水滴がひっきりなしにしたたり落ちる。
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シンと静まり返った洞窟内は思いの外広く、水滴の落ちる音とどこからか聞こえてくる水流の微かな音以外は何も聞こえない。
 
足音と声が反響して二重三重に響く。
 
ここは音響効果が素晴らしく、コンサートなども開かれることがあるという。

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シーズン中には次々に押しかける欧米の観光客が長蛇の列を作り、洞窟内は賑やか極まりない。
 
写真を撮るにも人だらけで、とてもこのような神秘性を味わうどころでは無いのだ。
 
 スピロスさんの計らいで、思わぬ貴重な体験をさせてもらった。
 
ふと後ろを見ると老人は入り口のところで佇んでいた。
 
シーズン中なら入場料は10ユーロ。
 
門番ならばこういう場合特にチップを要求するものだ。
 
入場料とチップを含めユーロを渡そうとすると、老人は頑としてそれを受け取らず、代わりに歯の抜けた笑顔で微笑みを返しただけだった。
 
再び地上に出ると、眩しく照りつける太陽に一瞬目が眩み、現実世界に引き戻されたようだった。
 
 閉まっているはずの鉄柵の前なんかで随分長くいたもんだと、スピロスさんは不思議そうな顔をして待っていた。
 
 あの老人は果たして何者だったのだろう。もしかしたら、人間に化けた洞窟の守り神だったのかもしれない。
 
 振り返ると、もう老人の姿はどこにも見当たらなかった。
 
 
 
 
次に立ち寄ったのはサミの港町。ここも夏になると欧米客たちが押し寄せるリゾート地だが、今は漁船が静かに漂っているだけだ。

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車は北西に進路を変えて、澄み切った空気の中くねくね道をひた走る。すると、前方からカラカラとおびただしい数のベルが鳴る音が聞こえる。
 
じきに、車は羊の大群に突っ込んだ形となった。

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ケファロニア島は羊や山羊の放牧が盛んで、しばしばこのような大群に鉢合わせすることがある。

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やっとのことで羊の渦から抜け出すと、車は再び空き地に停まった。
 
車を降りると潮の香りがする。木陰を通ってスピロスさんの後に続くと、ふと出たところは穏やかで透明度の高い海であった。

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静かな波の音に癒される。
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さらにビーチから少し陸の方へ入り木のトンネルの抜けると、そこには例えようもなく美しい風景が広がっていた。

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カラヴォミロス湖。

 

サミから1キロほどのカラヴォミロス村にある。
 
すぐ近くには海があるのに、ここは淡水の湖である。遠くの湧水が地下を通り運ばれてきて、ここに湧いているのだという。
 
ここは日本のガイドブックや口コミの類では、まず見たことが無い穴場である。
 
そよかぜに揺れる緑の木々、そして非常に高い透明度を保つ静かで美しい湖とビーチ。人間がいない代わりに、あひるが一羽よちよちと歩いていた。

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この日のファッションは、イオニア海の青、そして次回登場するカラフルな港町にマッチするマリンスタイルがテーマ。
 
妹はボーダーのトップスとイオニア海をイメージしたブルーのスカーフをポイントとしたカジュアルなマリン。

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そして私はモノトーンがベースのモードなマリン。

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母のファッションとともに、詳しくは次回ご紹介する。
 
 
 
さて、お次はケファロニア島で私が最も期待していた、地底湖メリッサニ洞窟だ。
 
実はここも日本では情報に乏しく、情報によっては年中オープンというものと、夏しか開いてないというものがあった。
 
ホテルのおじさんに聞いてみたところ基本的にはクローズ。
 
ただし、何とかならないか頼み込んだところ洞窟に電話をしてくれ、行けば開けてくれるということになったのだ。
 
 
洞窟入口の周りに辿り着くと、陽だまりで男たちがボートのメンテナンスに精を出していた。
 
観光客はやはり私たちだけだ。
 
スピロスさんが彼らに話かけると、特に入場料を取るわけでもなく、いいよ、そこから入んな!と洞窟に続く入口を指差してくれた。
 
入口から地底湖までは狭い通路を下って地中へと入って行く。
 
通路を少し下ると、向こう側にぽっかり空いた地底湖入口に光る色に、驚愕せざるを得なかった。
 
見たことも無い鮮やかな青い光が、キラキラというよりも、ゆらゆらと揺らめいている。

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遠くからでもその青の眩さがハッキリと分かる。

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とうとう地底湖に向かって開いた入口へと辿り着いたところで、私たちは言葉を失った。

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普通の青では無いのだ。
 
自然界にこのような青が存在するのだろうか。
 
カプリ島の青の洞窟をはじめ、世界中で美しい青を見たが、ここの青はそれらとまた全然違った種類なのである。
 
絵の具の群青色を水に溶かしたような、濃くて鮮やかな青。

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午後13時という陽の差し込む時間帯も良かったのかもしれない。
 
約数千年前から地底に存在していたこの湖は、島を襲った大地震によって地表が壊れたことで姿を現した。
 
その時の地震でぽっかりと空いた天井の穴から強い日差しが差し込み、洞窟内に光の柱を生み出している。

 

洞窟の奥行は約160m。最深部まで39mもありながら水底まで透けている。
 
陽の光を受けた水面はコバルトブルーに変化し、ゆらゆらと揺らめいた水面はそれが洞窟の壁に反射して、壁をまた摩訶不思議な色彩に彩っている。

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そして、人の気配が全く無い静かな静かなこの空間は「妖精の棲む洞窟」と言われているだけあって、とてつもなく神秘的な雰囲気に満ちていた。
 
見上げると、洞窟内の高い岩壁にはコウモリなのか鳥なのか何か小さな生き物がときおり飛び交い、ホゥホゥホゥ、、とどこからともなく鳴き声が響く。

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湿度の高い地底湖は、岩肌から雫が滴り落ち水面に届くとキラキラと光の粒になって小さな波紋が無数に広がっていく。

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本来ならばボートで湖をクルーズすることができる。
 
その代わり、洞窟内に入るには列に並び、地底湖には何艘ものボートが観光客を乗せて浮かぶことになる。
 
オフシーズンの今は残念ながらボートクルーズはできないが、この地底湖を貸し切り状態で味わうことができるというメリットは、ボートクルーズを捨てたとしても余りある価値だと思う。

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いつまで経っても見飽きないこのメリッサニ洞窟。そろそろいいかい?とスピロスさんに促されながら、ようやく地底湖をあとにした。
 
ここでも、通常の入場料もチップも受け取ろうとする者はいなかった。
 
「また夏に来な、今度はボートに乗せてあげるからよ!」陽気なケファロニアの男たちの声を背中に聞きながら、次の目的地へと向かった。
 
ケファロニアの絶景は、まだまだ続く。
 
(2日目は後編に続く)