元添乗員の国外逃亡旅行記

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香港より愛を込めて ② ~マカオ~

三泊四日、民主化デモ真っ只中の香港・マカオへの旅。ネオン輝く繁華街や金色の水上レストランなどギラギラした部分だけでなく、今にも崩れそうな雑居ビルに侵入するなど、煌びやかな香港のもう一つの顔にも迫ります。マカオでは沢木耕太郎の「深夜特急」にも描かれた場所を訪問。今回は同行者ありの旅。【旅行時期:9月末】

 

 

ラウンジで食べるホテルの朝食に、油条豆浆 があったので飛びついた。

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これは以前台湾で朝食のため立ち寄ったローカル店で初めて食べ、その美味しさを未だ忘れられずにいたものだ。


【真夏の台湾ノスタルジー 一人旅】最終日~台北~ - 元添乗員の国外逃亡旅行記

 

 

さて、今日はマカオへデイトリップ。

 

 

香港島側では、上環駅がマカオへのフェリーターミナルに直結している。

 

 

出入国審査があるので、パスポートは必携だ。

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ターボジェットが香港マカオ間を約1時間で結んでいる。

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休日の午前中、マカオ行の船に乗り込む観光客たちは皆楽しげだ。

 

 

 

しかしこの時には、戻って来る頃に香港島側がえらい騒ぎになっていようとは知る由も無かった。

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抜けるような青空と、太陽の光がキラキラ反射する水面を眺めていると、あっという間にマカオ側のフェリーターミナルへ到着だ。

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船を降りると、雲一つない青空からは強烈な日差しが降り注いでくる。

 

 

香港よりも体感温度がいくらか高い。

 

 

フェリーターミナルからは各ホテルまで無料シャトルバスが出ている。

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マカオは電車が無いので路線バスかタクシーを利用して移動することになるが、フェリーターミナルから中心部に行くにはカジノで有名なホテルグランドリスボア行無料シャトルバスに乗るのが最も手っ取り早い。

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マカオは、セナド広場のあるマカオ島部分、そして陸続きになったタイパ&コロアン島部分が長い橋で繋がっている。フェリーも通常マカオ島に着く。

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シャトルバスを降りたホテルグランドリスボアは、カジノ目当ての観光客で賑わっていた。

 

 

キンキラ金の内装とは反対に、客の服装は意外なほどカジュアルだ。

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まずは観光の拠点となるセナド広場まで街並みを見物しながら歩いてみることにした。

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香港よりも街並みは整備されていて綺麗な印象だ。

 

 

やはりポルトガルの影響からか、ヨーロッパ的な雰囲気とアジアのテイストが絶妙にミックスされている。

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真っ青な空にパステルカラーのタイルが一際映える広場に出た。ここがセナド広場である。

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いつの間にか、どこか南欧の国にやってきたかのような錯覚に陥る。

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 白壁に緑の植物や鮮やかな花が南欧らしさを醸し出している。

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ランチは広場近くの人気店、金馬輪珈琲餅店で、マカオ名物ポークチョップバーガーを食べることにした。


レストランマカオ|アジア|金馬輪咖啡餅店

 

 

餅店というのはパン屋のことで、つまりここは地元のベーカリーカフェ。店頭にはずらりとパンが並んでいた。

 

 

揚げた豚肉はシンプルに塩コショウで味を付けてあり、驚くほどに柔らかい。パンはホカホカの焼き立てで、ふんわりと柔らかく表面にカリッときつね色の焼き色がつき、ほんのり甘みがある。

 

 

このバーガーには、マカオの甘いミルク珈琲が良く合う。

 

 

外は30℃を超える暑さ。キンと冷えた店内でよく冷えたアイス珈琲とバーガーを食べると、ようやく人心地ついた。

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セナド広場から有名な聖ポール天主堂跡に行くまでの間脇道に逸れてみると、また一味違った風景に出くわす。

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一年中温暖な気候のマカオの街並みには、どこかのんびりとした空気が漂っている。

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聖ポール天主堂跡に続く通りへ戻ってくると、一転してものすごい人の波。両脇には土産物店の売り子が声を張り上げ客とやりあっている。

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人ごみを抜けると、目の前にはあの印象的な佇まいの聖ポール天主堂跡が聳え立っていた。

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本体は焼失しファサードの部分のみが残ったというこの建築物は、それでも圧倒的な存在感で人々を見下ろしていた。

 

 

 

沢木耕太郎が「深夜特急」の中でも描いているこの場所。小説の中の主人公のように、天主堂から街を眺めてみる。

 

 

 

 広い空に明るい色の街並み。

 

 

 

マカオは綺麗だった。

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 容赦なく照りつける太陽に、すぐに涼しいカフェが恋しくなる。

 

 

 

続いて向かったのは、マカオ島の喧騒を離れた静かな場所に立つグランドラパホテル。

 

 

ここにはマカオ本来のゆったりした時間が流れ、クラシックな内装にまるで時が止まったかのような感覚を憶える。

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二階にあるカフェ・ベラヴィスタは「深夜特急」の中で描かれている実在したホテル・ベラヴィスタを再現したものだ。

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香港で格安売春宿の一部屋を借り節約放浪旅を続けていた主人公は、偶然泊まることになってしまったこの古いホテルの優雅さに困惑する。

 

 

コロニアル風の内装が優雅なベラヴィスタは、確かにバックパッカーには不似合いかもしれない。

 

 

テラスからは緑の多い庭が眺められ、髙めの天井で回るファンが心地よい風を生み出している。

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ここでは「セラデューラ」という名物スウィーツが味わえる。

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砕いたクッキーとたっぷりのクリームが層になったベラヴィスタならではの甘いデザート。アイスレモンティーが良く合う。

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ゆったりした時の流れのなかでしばらく休憩すると、今度はタクシーで橋を渡ってタイパ&コロアン島部分にある複合エンターテイメント施設、City of Dreamsへと移動する。

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本日のメイン、ダンシング・ウォーターショーを見るためだ。

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カジノだけではない、エンターテイメントの街マカオならではのド派手なショーなのである。

 

 

シルクドソレイユやラスベガスのウォーターショーを手掛けたフィリップ氏の監修による驚くべき水と人間の饗宴。


マカオ ショー|マカオ ショー 水|シティオブドリームマカオ|ザ ハウス オブ ダンシング ウォーター

 

 

円形になったステージの周りを客席が囲む。

 

 

まずショーがスタートした瞬間に度肝を抜かれた。

 

 

とてつもなく巨大な船のセットがまるごと水から浮き出てくるではないか。

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いったいこの水槽はどれだけの深さがあるのだろうか。

 

 

そして人間業とは思えないパフォーマンスの数々。

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驚くべきは、先ほどまで並々と水を湛えていた水槽が、一瞬にして浅瀬に早変わりする様。

 

 

とても同じステージ上で繰り広げられているとは思えない。

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天井から容赦なく、滝のように流れ落ちる大量の水。そしてその嵐のような水量の中でありえない動きをするパフォーマー達。

 

 

どこにこれだけの水量を蓄えておくのだろうか。

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またしても一瞬にしてステージから水が消える。

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空飛ぶバイクが登場。

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圧巻のフィナーレ。f:id:mamfuj:20141105150400j:plain

 

 

マカオはやはり人々に夢を見させるところなのだろう。華々しく煌びやかで、そして魔法がかったようなショーが終わった後、なんだか急に現実に引き戻されたような感覚に襲われた。

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深夜特急」の主人公が最初に入ったリスボアカジノ。

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グランドリスボアホテル内にはカジノがあり、カジノフロアを見下ろせるところに「粥麺荘」というカジュアルなレストランがある。

 

 

ここで夕食を食べることにした。

 

 

お腹が空いていたからか、担担風の麺と白身魚の炒め物を一気に食べきった。

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すっかり夜の帳が下りた後も、マカオはまだまだ眠らない。

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昼と夜とでは全く別の顔を見せるマカオ。

 

 

小説の主人公のようにカジノの不思議な魔力に憑りつかれ、ここから出られなくなったとしたら。

 

 

そんな想像を掻き立てる、怪しげな夜のマカオを後にした。

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~香港帰港後編 デモ勃発初日~

20時台の上環行に乗りたかったが、どういうわけか欠航していたので仕方なく九龍側へのフェリーに乗った。

 

 

九龍から地下鉄でホテル最寄りの金鐘(アドミラルティ)駅まではすぐである。

 

 

すぐのはずである。

 

 

しかし、なぜか地下鉄は上環駅でストップ。

 

 

別の線に乗り換えるも、今度は中環(セントラル)駅と金鐘駅では止まらずその先の湾仔(ワンチャイ)駅まで行ってしまったではないか。

 

 

金鐘駅で降りる方法は途絶えてしまった。

 

 

そこで、仕方なく湾仔で降り地上へ上がった。

 

 

タクシーで帰ろうと思ったのである。

 

 

しかし、地上に上がって目を疑った。

 

 

一体なんの騒ぎだろう。

 

 

そう、まさに日本でもニュースになっていた民主化デモの初日にぶち当たってしまったのである。

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 タクシーどころか道路は封鎖、まるで祭りのような騒ぎである。

 

 

そんな中、人々は特に慌てた様子もなく普通に歩いて帰路に就いている。

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 添乗先でデモに当たったっことは何度かあるし、海外でのハプニングには慣れているので特に慌てることはなかったが、これだけの規模のデモは日本ではまず有りえないだろう。

 

 

 現在の香港は、中国の一部でありながら一国二制度のもと独立した自治権を持っている特殊な区域だ。中国ではこういった特別区は香港、マカオのみである。

 

 

公然とこうしたデモを行うことができるのも、香港ならではのある意味特権であり、これが本土であればまず許されない。

 

 

いつの時代も帝国主義の犠牲になってきた香港がやっと得た束の間の自由。

 

 

所詮中国の掌の上で転がされているだけに過ぎないのかもしれないが、彼らにとっては唯一の希望であり、縋らざるを得ない藁であった。

 

 

ゆっくりと、しかし着実に迫りくる本土化の波。

 

 

それがどれだけ怖いことか。香港市民の必死の抵抗を目の当たりにしたようで、デモに当たってアンラッキーという感覚は不思議と湧いて来なかった。

 

 

香港市民たちのむせ返るような熱気を感じながら、汗だくでホテルへ戻ったのは深夜1時近かった。